無料ユーザーが支えるビジネス:フリーミアムが「継続課金」を必要とする理由
フリーミアム ビジネスモデル 読了時間 5分

無料ユーザーが支えるビジネス:フリーミアムが「継続課金」を必要とする理由

フリーミアムは無料の「フリー」と上級版の「プレミアム」を組み合わせた造語で、少数の有料ユーザーが大多数の無料ユーザーを支える構造を持つ。2009年のクリス・アンダーソンの著書『フリー』をきっかけに広まった。AdobeのPDF閲覧ソフト無料化やスマホゲームの基本プレイ無料が代表例で、一度きりの売り切りではなく継続課金を前提とする点が要点となる。

無料ユーザーが支えるビジネス:フリーミアムが「継続課金」を必要とする理由

二つの言葉を組み合わせたビジネスモデル

フリーミアムは、無料を意味する「フリー」と、割り増し・上級版を意味する「プレミアム」を組み合わせた造語です。この言葉が広く知られるきっかけになったのは、2009年にクリス・アンダーソンが出版した『フリー』でした。アンダーソンはアメリカのIT雑誌『WIRED』の編集長を務めた人物で、同書で論じた「無料」の考え方が、フリーミアムを一気に広めたのです。

このモデルの構造は、ひと言でいえば「少数の有料ユーザーが、大多数の無料ユーザーを支える」というもの。デジタル分野で特に見られるのは、コンテンツやサービスをデジタル化すると複製や配布のコストがごく小さくなるからです。無料ユーザーが一人増えても追加コストはわずかで済むため、企業は大量のサービスを無料で提供できるのです。

無料は入口にすぎず、収入は「継続」しなければならない

フリーミアムを二次元の図で位置づけると分かりやすくなります。横軸が価値の源泉、縦軸が儲けの獲得方法です。フリーミアムの価値の源泉は「引き合わせ」、つまりまず無料で使ってもらい、その中からより高い価値にお金を払う人を見つけ出すこと。そして儲けの獲得方法は、一度きりの売り切りではなく「継続課金(リカーリング)」の欄に置かれます。

ここは見落とされがちな点です。もし「無料版+有料版」が一度きりの売買だとしたら、それは本質的に組み合わせ販売に近くなります。集客の目玉になる商品で人を呼び、別の商品で利益を上げるやり方です。フリーミアムはそれとは違い、有料ユーザーに払い続けてもらうことで、収入が時間とともに積み上がっていきます。言い換えれば、時間こそがこのモデルの決定的な変数なのです。

Adobeの事例:無料のリーダーが規格を広めた

PDFはフリーミアムを理解するうえで古典的な事例です。Adobeが開発したPDFは電子文書のファイル形式で、どのようなパソコンやハードウェアを使っていても、文書や図形を表示できます。Adobeは、PDFを読むためのAcrobat Readerを無料で世界中に提供しました。

無料版でできることは限られています。閲覧と印刷だけです。しかしほとんどの人にとっては、それで十分でした。PDFを編集したい人、あるいは特定の形で共有したい人だけが、有料のAcrobatを購入する必要があります。こうしてPDFは規格としてできるだけ広く普及し、有料版の販売も拡大していく余地が生まれました。

逆に考えてみてください。PDFを読むソフトまで有料だったら、これほど普及しなかったでしょう。「見る」のが無料だからこそ規格が広がり、「編集する」には有料版が必要だからこそ、ビジネスが成り立つのです。

ゲーム業界がこの論理を極限まで押し進めた

フリーミアムが最も活発なのはゲーム、とりわけスマートフォンゲームです。

昔のゲームは別の論理でした。まずファミコンやプレイステーションのようなハードを買い、カセットやディスクを買う。一本ごとの買い切りです。現在の運営型スマホゲームでは、「基本プレイは無料、特別なことをすると有料」という形が一般的です。mixiが運営する『モンスターストライク』(モンスト)はその典型で、累計利用者は6200万人を超えています。利用者の規模は前提ですが、さらに重要なのは、その中に課金してくれる人がいることです。

ある人気ゲーム会社の社長はこう説明しています。ランキングの上位に来るようなユーザーは、毎月100万円以上を使う。この一部の重課金ユーザーがゲーム全体を支えているのです。買い切り型との最大の違いは、課金してくれるユーザーが十分にいる限り、運営型ゲームには「クリアしたら終わり」がないことです。

ランキングの裏側:定番ゲームと、数多くの撤退者

世界のゲーム売上高の年間ランキングによると、2023年の売上高トップは2013年に配信を開始した『モンスターストライク』でした。2020年以降に配信を始めてトップ10に入ったのは、『ウマ娘 プリティーダービー』『原神』など四本だけです。つまりランキングの大半は、今も2010年代に配信されたゲームが占めています。少数の定番作品が長く上位に居座っているのです。

一方、ランキングの外側は決して順風満帆ではありません。配信後に想定した数のユーザーを集められず、サービスを終了するゲームが数多くあります。正式な配信前に「期待する売上高が見込めない」と判断され、開発自体が中止されるケースもあります。

ここでフリーミアムの前提に戻ります。まず無料で使ってくれるユーザーが大量にいて、はじめてその一部が課金してくれる可能性が生まれます。無料ユーザーすら集められなければ、このモデルは維持できないのです。

おわりに

フリーミアムの要点は「無料」という見かけの目新しさではなく、無料と有料の間の導線が機能しているかどうかにあります。無料が十分な数のユーザーを呼び込み、有料がその一部に払い続けてもらえるか。無料が入口を広げ、継続課金がビジネスを成り立たせる。どちらが欠けても成立しません。

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